手で挽く時間のなかで
前の晩は、少し遅くまで本を読んでいた。夜が深まるにつれて部屋は静まり返り、その静けさのまま眠りについたような朝だった。 窓の外では、風がやわらかくカーテンを揺らしている。空はうっすらと曇りがちで、光は強くない。けれど、ど…
前の晩は、少し遅くまで本を読んでいた。夜が深まるにつれて部屋は静まり返り、その静けさのまま眠りについたような朝だった。 窓の外では、風がやわらかくカーテンを揺らしている。空はうっすらと曇りがちで、光は強くない。けれど、ど…
昼の気配がまだ残っているうちに、台所に立った。今日は少し手間をかけて、グラタンを作ろうと思っていた。特別な日というわけではないけれど、なんとなく、そういう気分だった。 買い物は昨日のうちに済ませてある。鶏肉と玉ねぎ、じゃ…
朝のうちはまだ風が涼しかったけれど、昼前になると空気がすこしぬるんできた。日差しがやわらかくて、季節が一歩ずつ夏に向かっているのがわかる。湿気はまだ少なく、風が通るたびに葉の影が地面にゆれていた。 今日は外でごはんを食べ…
今日は、朝から少しだけ体が重たかった。疲れているわけでもなく、気分が沈んでいるわけでもない。でも何かが過不足なく蓄積していて、どこかで整えたくなるような感覚があった。 そんな日には、外に出るよりも、部屋の中で何かをする方…
朝は、何かが決まっていなくてもいい時間だと思う。どこかに急ぐ予定もなく、家の中の光だけで時間の流れを感じるような朝。カーテンを少しだけ開けて、窓際の空気を確かめる。そんな日には、あわてて食べる必要のない朝ごはんを、静かに…