麦茶を煮出す、静かな午後に
昼間の熱気がゆっくりと家の中まで入り込んでくるころ、冷たい飲みものが恋しくなる。氷の入った麦茶を、コップでぐいと飲むような、そんな季節になってきた。 そう思ったとき、手に取るのはいつも片手で扱える小さなミルクパン。コンロ…
昼間の熱気がゆっくりと家の中まで入り込んでくるころ、冷たい飲みものが恋しくなる。氷の入った麦茶を、コップでぐいと飲むような、そんな季節になってきた。 そう思ったとき、手に取るのはいつも片手で扱える小さなミルクパン。コンロ…
朝、台所の戸棚を開けて、一番手前にあった鍋をそっと引き出す。取っ手の角度、底の広がり、持ち上げたときの軽さ──手にした瞬間、それが雪平鍋だとすぐにわかる。ステンレスの地が少し曇っているのが、使い続けてきた証のように見える…
朝から空気が湿っていて、体を動かすのもすこし億劫な日だった。梅雨が明けて日差しこそ強いけれど、風が通るわけでもなく、空気がどこか滞っている。それでも、何かを作って食べたいと思えるのは、きっと、台所にすり鉢があるからだと思…
朝、早く目が覚めた。夏が近づくにつれて、自然と目が覚める時間が早くなっていく。カーテンの向こうからやわらかい光がさしていて、少しだけ風もある。 顔を洗い、簡単に掃除を済ませて、キッチンに立つ。今日はそうめんにしようと思っ…
朝の台所に立つとき、外の空気が少しだけ湿っていると感じた。夜のあいだに降った雨が残っているのかもしれない。それでも風はすっきりしていて、背筋を伸ばすと少しだけ目が冴えるようだった。 冷蔵庫を開けて、野菜室からじゃがいもと…
鉄器のやかんを使うようになったのは、少し前にふらりと立ち寄った雑貨屋で見つけたのがきっかけだった。棚のいちばん奥、少し埃をかぶったような佇まいで置かれていたそのやかんは、重たくて、少し無骨で。でも、なぜか心惹かれてしまっ…
昨夜のうちに、少し多めにごはんを炊いた。しっかり食べたはずだったのに、思った以上に余ってしまって、冷凍する前に、棚に置いてあった陶器のおひつを手に取った。台所の隅に、ずっとそこにあったもの。自然と使うようになったのは、こ…
梅雨の晴れ間。薄い雲の向こうからぼんやりと光がさして、部屋の奥まで、白っぽい明るさが静かに広がっていた。洗濯物を干すには湿度が高そうだったけれど、だからといって何か急かされることもなく、ゆっくりと朝が動き出している。 こ…
少しだけ早く目が覚めた朝だった。 空気はまだ冷たくて、カーテンの隙間から射す光も、白くて淡い。まだ誰も動き出していないような気がして、足音さえも静かにしながら台所に立つ。 今日の朝ごはんは、目玉焼きとソーセージにしようと…
なんとなく、落ち着かない夜だった。 外は静かで、部屋も整っていて、体も疲れていないのに、どこか気持ちがざわついている。特別なことがあったわけでもなく、ただ一日が終わって、時間だけが余っているような夜。 こんなときは、ご飯…