パンが上がる音が、朝の合図になる

朝の空気が軽くなってきた。
窓を開けると、少しだけ湿り気を帯びた風が入ってきて、部屋の中にやわらかく流れていく。
初夏の気配が静かに満ちはじめているような、そんな朝。

キッチンに立つと、自然とあの道具に手が伸びた。
ポップアップトースター。
食パンを差し込んで、レバーを下げるあの動作が、なぜか落ち着く。
準備が整えば勝手に焼き上がりを知らせてくれる、あの小さな「トン」という音が、毎日の始まりにちょうどいいリズムをくれる。

最近はオーブンレンジでなんでもできてしまうけれど、パンだけはどうも違う。
温まるのを待って、手動で取り出すのもいいけれど、どうしても「用意して食べる」という感じが強すぎてしまう。
その点、ポップアップトースターは、少し遊び心がある。
パンがふわっと飛び出す一瞬に、朝の緊張がほどけていく感じがして、これが案外、気に入っている。


パンが焼ける間に、ヨーグルトを器に盛り、季節の果物を切る。
今日はキウイとオレンジ。切っただけなのに、並べるとそれらしく見える。
トマトときゅうりのサラダには、オリーブオイルと塩を少し。

食卓の準備を終えたころ、「カチン」と、パンが上がった。

軽く焦げ目がついた食パンを皿にのせて、バターをひとさじ。
すっと溶けていく様子を見ながら、少しだけ気持ちが和らぐ。
カリッとした耳の部分と、ふわっとした中の部分の対比も、このトースターならではの仕上がりだ。

ゆっくりと朝ごはんを食べる時間は、1日の中でもいちばん好きかもしれない。
まだ誰とも話していなくて、予定も動き出していない静けさがある。
一口ごとに、体が目覚めていくような感覚があって、あたたかいものを食べているというだけで安心する。

それにしても、ポップアップトースターの「上がる音」は、いつ聞いても気持ちがいい。
驚くような大きさではないのに、ちゃんと聞こえて、気配を伝えてくれる。
カウンターに置いてある姿も、どこかレトロでかわいらしく、使わないときも目に入るだけで少し嬉しい。

食事の途中で手を止めて、ふと外を見る。
朝の光がカーテン越しにやわらかく差し込んでいて、部屋全体がほんのりと白く明るい。
窓の外では、風が木の葉を少しだけ揺らしていた。

食べ終わった皿を流しに運んで、コーヒーをもう一杯淹れた。
トースターの余熱がまだ残っているのか、ほんのりとあたたかい。
キッチンの隅にあるだけなのに、この道具があると朝がうまく回っていく気がする。

ポン、と上がる音に気づくたびに、静かなうれしさがある。
わざわざ意識しなくても、自然に毎朝手が伸びるのは、きっと自分の暮らしのリズムにちゃんと馴染んでいるからなんだろう。

オーブンレンジは便利だけれど、パンだけはこのトースターじゃないと物足りない。
そういうちょっとしたこだわりが、自分にとっての心地よさなんだと思う。

窓を開けたまま、椅子に深く腰をかけて、コーヒーをひと口。
風が通りぬけて、カーテンが軽く揺れる。
今日は特別な予定もないし、このまま静かな午前中をゆっくり過ごすつもり。

ポップアップトースターの小さな「音」は、そんな一日の始まりに、ちょうどいい合図になってくれている。

このトースターを買ったのは、そんなに前のことではない。
どこにでもあるような機能しかないけれど、使い始めてすぐに、「ああ、これでよかった」と思った。
焼き加減の調整も簡単で、何よりもあの上がるときの感覚がいい。
少し間を置いて「こんっ」と響く音が、なんだか自分の暮らしにぴたりと合っていた。

トーストを焼く時間も、いつの間にか自分だけの静かなひとときになっていた。
スマートでも便利でもないけれど、こういう少しだけ手をかけるような道具が、今の自分にはちょうどよく思える。

朝の食卓に、小さな安心がひとつ増えるだけで、その日がすこし豊かになる。
そう思わせてくれるような道具に出会えると、ほんの少しだけ気持ちが前に向く。
ポップアップトースターは、そんな存在のまま、これからも毎朝、静かに働いてくれると思う。

▼しずかな時間に馴染むもの▼

外はカリッと、中はふんわり焼き上げてくれるポップアップトースター。
朝の静かな時間に、パンが上がる小さな音が心地よいリズムになります。

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