野菜を刻む、雨あがりの昼

朝方まで降っていた雨が、昼前には止んだ。
窓の外にはまだ湿った空気が漂っていて、雲の切れ間から、ときおり薄い光が差し込んでいる。
庭先の草木はしっとりと濡れていて、葉の先には水滴がきらりと光っていた。

静かな昼だった。
今日は予定もなく、ゆっくりしたい気分だったので、買っておいた合い挽き肉でミートソースを作ろうと思った。
煮込み料理は時間の流れがゆるやかになる。そんな昼にちょうどいい。

冷蔵庫を開けて、野菜を取り出す。
玉ねぎ、人参、セロリ。
シンプルだけれど、細かく刻んだ野菜をたっぷり入れると、ソースの味わいがやわらかくなる。

まな板と包丁を用意しながら、今日は紐を引いて刃を回転させて刻む小さなカッターも一緒に使うことにした。
玉ねぎをたくさん刻む日は、ときどきこの道具に助けてもらう。
容器に野菜を入れて、蓋をして、ハンドルを何度か引くだけで細かく刻める。
もちろん包丁の音も好きだけれど、こうした道具を組み合わせて台所の作業を自分なりに整えていく感じも、また楽しいものだ。

玉ねぎの皮をむき、ざくざくと大まかに切って、容器に入れる。
ふたを閉めて、紐をすっと引く。
中で刃が回転して、カタカタという小さな音が響く。
何度か引いては様子を見て、もう少し、と加減をしながら刻んでいく。

たっぷりの玉ねぎが、きれいに細かくなった。
このくらいまで刻んでおくと、煮込んだときに甘さがよく出る。
続けて人参とセロリも刻む。
色とりどりの野菜がボウルにたまっていくのを見ると、それだけでなんだかうれしくなる。

鍋にオリーブオイルをひき、火を入れる。
ゆっくりと温まる間に、にんにくを刻んで加える。
ふわっと香りが立ちのぼってきたら、刻んだ野菜を一気に入れる。

じっくりと炒めていく。
木べらを動かす音と、鍋から立つ湯気。
雨上がりの湿った空気のなかで、この温かな香りが部屋の中に広がっていくのが心地いい。

やがて野菜がしんなりと甘くなってきたら、合い挽き肉を加えて炒める。
肉の色が変わったところで、赤ワインとトマト缶、ローリエを入れて、じっくり煮込む準備に入る。

ふたを少しずらして火を弱め、静かにコトコトと煮込んでいく。
ときおり鍋をのぞき、木べらで混ぜながら味を整えていく。
煮込みの時間は、せかせかしないで済むから好きだ。
外はまだ曇り空だけれど、窓を少し開けてみると、ほんのりと土の匂いが流れ込んできた。

やがてソースがほどよく煮詰まってきた。
味見をして、塩と胡椒で整える。
皿を温め、パスタを茹でる準備をする。

湯気の立つ鍋のそばで、もう一度手を伸ばして紐を引いて刻む小さなカッターをふき取った。
こういう道具も、使い方ひとつで暮らしに静かに馴染む。
今日はこの道具があることで、少し丁寧に仕込みの時間を持てた気がする。

茹でたてのパスタにソースをたっぷりかけて、パルミジャーノを削ってのせる。
湯気の立つ皿をテーブルに運ぶころには、窓の外に少し陽が差していた。

フォークを手に取り、ソースをよく絡めて口に運ぶ。
しっかりと煮込んだ野菜の甘さと、肉の旨みがふんわりと広がる。
雨上がりの静けさのなかで、こうして熱々のものをゆっくり味わうのは、とても満ち足りた時間になる。

パスタをひと口ずつ楽しみながら、窓の向こうに揺れる葉の影を眺める。
次はまた、違う煮込みにもこの道具を使ってみようかな。
そんなふうに思いながら、食後の片づけにとりかかるのだった。

▼しずかな時間に馴染むもの▼

野菜をたっぷり刻むときに、あると助かるのがこうした手動のカッター。
手軽に使えて、暮らしに自然と馴染む道具のひとつです。

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