朝からすでに、空気がむっとしていた。
7月の上旬とは思えない、というより、もはや毎年のことになりつつあるこの暑さ。
少し動くだけでも汗がにじんでくるような気候だった。
窓を開けても、風はあまり入ってこない。
それでも空の色がきれいで、部屋の中に明るさが満ちていくのは気持ちがいい。
麦茶を飲みながら、ゆっくりと朝の時間を過ごした。
洗濯物を干し終えて、近くのスーパーへ向かうことにした。
ほんの10分ほどの道のりだけれど、こんな日はそれでもためらってしまう。
少し前まではそのまま外に出ていたけれど、最近は気持ちが変わった。
玄関のかごに入れていた、折りたたみの日傘を取り出す。
手のひらに収まるくらい小さくて、鞄に入れていてもほとんど気にならない。
以前から持ってはいたけれど、なかなか使うきっかけがなかった。
なんとなく習慣になっていなかっただけで、忘れていたような道具だった。
ある日ふと思い立って差してみたら、それだけで体がずいぶん楽だった。
直射日光が遮られるだけで、体の温度が下がる感覚があった。
日陰の中を歩いているような、少しほっとする感じ。
それから、出かけるときには自然と手が伸びるようになった。
外に出て傘を開くと、ほのかに生地の匂いがした。
軽くて風にも煽られにくく、持ちやすいのがうれしい。
空は真っ青で、アスファルトがまぶしく光っていたけれど、顔まわりは驚くほど快適だった。
通り道の花屋では、朝顔と小さなひまわりが並んでいた。
スーパーの中は涼しくて、思わず長居しそうになる。
冷ややっこに合わせる薬味を選び、ナスとししとうをかごに入れる。
とうもろこしも見かけて、少し迷ってから手に取った。
帰り道、日傘がなかったらどうなっていたかと考える。
数年前まで平気だった暑さが、今はかなり応えるようになってきた。
それを無理に我慢する必要はない。
ちゃんと涼しくする工夫があるなら、素直に取り入れたほうが心地よい。
帰宅後、買ってきた野菜を冷蔵庫にしまい、ざるうどんの準備を始める。
薬味はたっぷり刻んで、氷でしめたうどんに添えた。
とうもろこしは茹でて、甘さを残したままほぐす。
冷ややっこには青じそをのせて、少しだけ醤油を垂らす。
汗をかいたあとに食べる、ひんやりとしたものたち。
どれも特別ではないけれど、ちゃんと体が喜んでいるような味だった。
冷たい麦茶を飲んで、ごはんのあとの静けさに身をあずける。
午後はゆっくり本を読んだり、洗濯物を取り込んだり。
日傘を差していたおかげか、体に余分な疲れが残っていないように感じた。
暑さとうまくつきあう方法は、たぶん一つじゃない。
けれど、自分に合った方法を一つ見つけるだけで、日々の過ごし方が少し変わる。
日傘は、思った以上に頼りになる道具だった。
目立たないけれど、しっかりと自分を守ってくれている。
そんな道具がそばにあると、出かけるときの気持ちも変わってくる。
日差しが強い日ほど、歩くペースは自然とゆっくりになっていく。
それも悪くないと思えるようになってきた。
▼しずかな時間に馴染むもの▼
小さく折りたためる日傘が、暑い日のお出かけを静かに支えてくれます。
直射日光を避けるだけで、歩く気持ちまで軽くなるのを感じます。

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