一日の終わりに、マットの上で

夕方、買い物を終えて帰ってくると、空の色がうっすらと変わっていた。
日が伸びてきたとはいえ、季節はゆっくりと夏に向かって進んでいる。
キッチンに立つころには、窓の外がオレンジと青のあいだで揺れていた。

冷蔵庫にあった鮭を焼き、冷ややっこと味噌汁を添えて、白いごはんをよそった。
炊きたての湯気が立ち上るなかで、箸を動かすと、自然と心が落ち着いてくる。
焼き目のついた鮭の香ばしさと、豆腐のやさしい口当たり。
どれも特別なものではないけれど、ほっとできる味だった。

食後、茶碗を洗い、台所のまわりをさっと拭く。
調理器具を片付けて、すっきりとしたキッチンを眺めると、それだけで一息つけた。
あとはお風呂に入って眠るだけ、という気分になる。

お風呂は少しぬるめにして、ゆっくりと湯に浸かる。
体がじんわり温まって、今日一日の疲れが浮かび上がってくる。
何かを考えるでもなく、ただぼんやりと湯気の向こうを見つめていた。

髪を乾かし、洗濯機をまわして、洗い上がった服を干してから、
リビングの床に、くるくると巻かれていたヨガマットを広げる。
静かな時間の中で、足の裏でマットの質感を確かめながら、少しだけ深呼吸する。

仰向けになり、膝をかかえてゆっくりと左右に揺れる。
背中が床に広がっていくような感覚が心地いい。
そこから少しずつ、股関節や肩、首を軽く動かしていく。
ヨガというよりも、ただのストレッチに近い。
でも、そういうのがちょうどいい夜もある。

腰をひねったり、肩を回したり、呼吸に合わせて動きを整えていく。
部屋の明かりは、足元のスタンドだけにしていた。
あかりの少ない空間で体を動かすと、外の音がよく聞こえる。
遠くで車のエンジン音、誰かの歩く音。
そういう音の中で、自分の呼吸に意識を向けるのは不思議と落ち着く。

時間を測ることもなく、疲れてきたなと思ったら動きを止める。
そのままマットの上で大の字になり、天井を見つめる。
何かを考えているようで、何も考えていないような、そんな時間。
一日が終わったという実感が、体の重さとともにやってくる。

しばらくして、ゆっくりと体を起こす。
マットを巻いて、端に立てかけ、明かりを消す。
床に残ったぬくもりが、わずかに手に伝わってきた。

眠る前のほんの少しの時間。
そこにマットがあるだけで、自分の中の静かなスイッチが入る。
忙しい日も、なんでもない日も、終わりの合図のように。

▼しずかな時間に馴染むもの▼

眠る前のひとときをゆるやかに整えてくれるヨガマット。
体をほぐしながら、心まで静かになっていく時間は心が整う気がします。

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