午前中から静かに降っていた雨は、昼を過ぎても止まなかった。
細かな雨粒が、窓に淡く打ちつける。強くはないけれど、ずっと続いている。
その音は不思議と落ち着くもので、室内の空気までやわらかくしていた。
こんな日は、外に出かける気にはならない。
予定がないのを、今日はありがたく思った。
静かな時間が、雨にぴたりと寄り添ってくる。
起きてからコーヒーを一杯飲んだだけで、お腹が空いていた。
でも焦る必要はなかった。せっかくなら、ゆっくりと昼ごはんを作ろうと思う。
雨の日の昼は、何を食べようかと考えるところから、もう楽しい。
キッチンに立ち、冷蔵庫を開ける。
目に入ったのは、使いかけのじゃがいもとブロッコリー、それに昨日買ったしめじとパプリカ。
パスタにしよう。野菜たっぷりのクリームソースにして、余っていた牛乳を使いきる。
料理を始める前に、部屋の灯りを少し落とした。
外の光が曇っているから、室内はすでに夕方のような雰囲気だった。
そんなときは、キャンドルウォーマーランプのスイッチを入れる。
炎はないけれど、じんわりとした灯りと、キャンドルの香りが空間を変えてくれる。
今日は柑橘系の香りにしてみた。雨の日に似合う、すっきりとした香り。
電球の熱でキャンドルの蝋が溶けていく。
ふわっと香りが立ちのぼると、なんでもない日がすこし特別になるようだった。
鍋にオリーブオイルを引いて、にんにくの香りを立てる。
しめじとパプリカ、ブロッコリーを加えて、軽く炒める。
そこに茹でたパスタと牛乳を加えて、とろみがつくまで煮込む。
塩と胡椒で整えて、最後に粉チーズをひとふり。
簡単だけれど、具材が多い分だけ満足感がある。
盛りつけに使ったのは、最近お気に入りの浅めの白い陶器の器。
ランチョンマットは敷かず、木のテーブルにそのまま置いた。
席につくと、ふと、雨音が前より静かになった気がした。
耳をすませば、遠くの車の音や、人の話し声もかすかに聞こえる。
でも、それらすべてが、雨の音に吸い込まれていく。
パスタを一口。
じゃがいもがほくほくしていて、ブロッコリーは程よい食感を残している。
しめじの旨味と、牛乳の甘さが、思った以上に合っていた。
ゆっくり咀嚼するたびに、体があたたかくなっていくのがわかる。
キャンドルウォーマーランプの灯りは、料理の横で静かに輝いていた。
炎が揺れていないのに、見ていると不思議と心が落ち着く。
火を使わないから安全で、つけっぱなしにしていても安心できるのもありがたい。
一度、雨が少し強くなった。
屋根を打つ音が変わったのがわかる。
けれど、それが煩わしく感じないのは、部屋の中に自分のリズムがあるからだろう。
食後に、温かい紅茶を入れた。
ミルクは入れず、少し渋めのまま。
先ほどの料理の余韻が残る口の中に、紅茶の香りがやさしく広がる。
テーブルの隅には、小さなノートと万年筆。
最近あったこと、感じたことを少し書く。
今日のような雨の日は、言葉がゆっくりと降りてくる。
「何もなかったようで、満ちていた日だった」
そんなふうにまとめた最後の一文が、今日の午後をうまく言い表してくれた気がした。
▼しずかな時間に馴染むもの▼
火を使わず、やさしい灯りと香りを楽しめるランプ。
静かな午後や、雨の日の空気にそっと馴染みます。

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