用事が長引いて、家に帰ったころにはもうすっかり夜になっていた。
外はまだ少し雨が残っていて、路面が濡れている。
疲れがたまった日ほど、不思議と家に帰ってからの静かな時間が待ち遠しくなる。
着替えを済ませて、軽めの夜食をとったあと、温かいお茶を淹れる。
それだけでも、少し心がほぐれる気がする。
今日は、何も考えずにただ本を読みたかった。
デスクの上に置いている小さなスタンドライトに手を伸ばす。
ふだんは部屋の照明だけで過ごすことも多いけれど、こういう夜はあえてデスクに小さな光を灯すのが心地よい。
手元だけがやわらかく照らされて、周囲の空間は少し暗めになる。
そのコントラストが、気持ちを静かにさせてくれる。
灯りをつけてから、棚から一冊本を選ぶ。
少し前に買ったエッセイ集。
長いものではなく、短い章が積み重なっている本は、こういう夜にちょうどいい。
疲れていても、少しずつページをめくることができる。
本とお茶をデスクに置き、椅子に腰を下ろす。
ライトの光が机の面をやわらかく照らしている。
広がりすぎないこの光の範囲が、ちょうどよい。
余計なものが視界に入らず、ページの中に自然と入り込んでいける。
一口、お茶を飲んでから、本を開く。
活字の並びを目で追ううちに、外の雨音がふと気にならなくなる。
ページをめくるたび、静かな時間が部屋に積もっていくような感覚がある。
今日は、スタンドライトの光がとても落ち着いて見える。
眩しさがなく、でもしっかりと文字が読みやすい。
色温度が少しあたたかめなのもいい。
目にやさしく、夜の空気ともなじむ。
お茶を飲みながら、また数ページ進む。
文章のリズムと、ページをめくる手の動きが静かに重なっていく。
こういう時間が取れると、気持ちがふっとほどけていく。
ふと時計を見ると、いつの間にかかなり時間が経っていた。
でも不思議と、眠気よりも心が軽くなっている。
本を閉じて、少し伸びをする。
スタンドライトのスイッチを切るまえに、もう一度、机の上を見渡す。
静かな光に照らされていた場所が、また夜の暗さに戻る。
でも、その残る余韻が心地よい。
今日はこのまま眠ろうと思う。
きっと、明日の朝は少し気持ちが整っているはずだ。
そんなふうに思いながら、電気を消して寝室に向かった。
▼しずかな時間に馴染むもの▼
小さなスタンドライトは、夜の静かな時間をつくってくれる道具のひとつです。
手元だけをやさしく照らしてくれる灯りがあると、本を読むひとときがより心地よくなります。

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