朝は曇っていたけれど、
昼が近づくにつれて少しずつ空が明るくなってきた。
今日は何をする、と決めていたわけではないけれど、
なんとなく家にじっとしている気分ではなかった。
窓を開けて空気を吸い込んだら、
風がやわらかくて思いのほか心地よかった。
原付でどこか走ってこよう。
そんな気持ちが自然に湧いてきた。
スピードを出してどこか遠くに行きたいわけじゃない。
ただトコトコと、ゆっくり走って風景の中に溶け込んでいたい。
最近はそんな走り方が気に入っている。
原付はそれにちょうどいい。
出かける準備をする。
今日は途中で少し温かいものを食べたかった。
無理にお店に入るより、
静かな場所で外ごはんをする方が気分に合っていた。
リュックに クッカー と バーナー を入れる。
スープ用の食材も簡単なものだけ。
家にあった野菜と、ソーセージ、それにスープの素。
飲みものはサーモボトルに水を入れて持っていく。
こういうちょっとした準備の時間が好きだ。
全部揃ったところでヘルメットをかぶり、原付に跨る。
エンジンをかける音が、気持ちを少し切り替えてくれる。
走り出してすぐ、
風の匂いが変わった。
街中の空気を抜けて、郊外に向かう道。
スピードは出さない。
トコトコと一定の音を聞きながら走っていく。
原付は速さを求めるものじゃない。
むしろこのくらいのリズムで走っていると、
景色がよく見えるし、空気の変化にも気づきやすい。
少しずつ坂道が増えて、
周りが開けてきた。
遠くに山の稜線が見える。
こういう景色の中を走るのが好きだ。
今日の目的地は特に決めていなかったけれど、
思い出した場所があった。
以前通りがかりに見つけた、
小さな展望スペースのような場所。
あそこならきっと静かに過ごせるだろう。
道を曲がって、少し細い道に入る。
舗装はされているけれど、
車が頻繁に通る道ではない。
木々の間を抜けると、空がまた広がった。
目的地に着いたのは、
出発してからちょうど小一時間ほど。
風に少し当たったせいか、
体がほんのりと疲れていた。
でもその疲れ方がちょうどよかった。
バイクを止めて、荷物を下ろす。
誰もいない。
静かな空と、遠くに見える街の景色。
音はほとんど聞こえない。
少し腰を下ろす場所を見つけて、
リュックから クッカー と バーナー を取り出す。
準備はすぐに整う。
こういう場面で、手間が少ない道具は本当にありがたい。
バーナーに火をつけて、
水を沸かす。
じわじわと音がしてきて、
湯気が見えはじめた。
切ってきた野菜とソーセージを入れる。
しばらく煮て、スープの素を加える。
香りが一気に広がって、
空腹感が増してくる。
スープができた頃には、
体の冷えもすっかり和らいでいた。
器に移さず、今日はそのままクッカーから食べる。
外で食べるなら、そのくらいがちょうどいい。
ひと口飲んだスープが、
驚くほど体にしみた。
風に吹かれながら食べるスープは、
家の中で食べるよりも、ずっと美味しく感じる。
具材もやわらかく煮えていて、
スプーンですくうたびに湯気がふわっと上がる。
空気はまだ少し冷たいけれど、
この湯気があるだけでずいぶん違う。
食べ終わる頃には、
心も体もすっかり満たされていた。
ほんの少しの道具と食材で、
こういう時間が作れるのがうれしい。
帰りはもう少し遠回りして帰ろうか。
走る時間そのものが今日は楽しいから。
トコトコとしたリズムが、
疲れた体にも心地よく響く。
こういう日があると、
また次も出かけたくなる。
次は何を持って行こうか。
そう思いながら、
エンジンをかけて静かに走り出した。
▼ しずかな暮らしに馴染むもの
キャンプ用のバーナー
コンパクトで軽くて、
静かな外の時間にぴったりの道具。
湯気を見ながら、
味わいのあるひとときを作ってくれます。

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