朝は曇りがちだった空が、昼近くになって少し明るさを取り戻してきた。
今日は家にこもってもいいかと思っていたけれど、ふと外に出たくなった。
少し遠回りでもいい。
原付で、まだ行ったことのない場所へ行ってみよう。
静かに過ごせそうなところがいい。
シングルバーナーとクッカーをバッグに詰める。
食材も用意した。
今日は鍋焼きうどんを作って食べようと思う。
冷凍うどん、鶏肉、長ねぎ、卵、ほうれん草、油揚げ。
シンプルな材料だけれど、静かな場所で湯気の立つうどんを食べるのは、きっと気持ちがいい。
道具と食材を整えてバッグに入れ、原付に積み込んだ。
少し風が出てきたけれど、空気は穏やかだった。
エンジンをかけて、静かに走り出す。
知らない道をゆっくりと走る。
信号も少なく、人通りもまばらだ。
風が顔にあたって心地よい。
見慣れない街並みや、ふと目に留まる草花。
どこか旅のような気分になる。
地図で目星をつけていた場所に着いた。
整備された公園ではなく、ちょっとした広場のようなところ。
キャンプ場というほどでもないが、火を使えるエリアがある。
平日だからか、人影もほとんどない。
木陰の近くに原付を止め、荷物をおろす。
小さなテーブルがあったので、そこを借りた。
風が少しあるが、静かで落ち着いた場所だった。
準備をはじめる。
バッグからシングルバーナーとクッカーを取り出す。
設置して、湯を沸かす。
火をつけると、小さな音がする。
その音と、時折吹く風の音だけが耳に入る。
湯が沸いたところで、鶏肉を入れて火を通す。
薄切りにしてあるので、すぐに火が通る。
出汁の素を溶かし、味を整える。
冷凍うどんを加えると、ふわりと湯気が立った。
長ねぎを斜めに切って加え、油揚げも入れる。
ほうれん草はさっと茹でたものを最後に添える予定だ。
火加減を見ながら、うどんがほどけていくのを待つ。
静かな空気のなかで、鍋の湯気が立ちのぼっていくのを見ていると、不思議と心が落ち着いてくる。
頃合いを見て卵を落とした。
白身がふわりと固まりはじめ、鍋の中がにぎやかになった。
最後にほうれん草を添えて、火を止める。
シングルバーナーの火が消えると、一層静けさが戻ってきた。
蓋を開けて、湯気の立つ鍋焼きうどんを目の前に置く。
箸を手に取り、まずは出汁をひと口。
やわらかい味わいが体にしみていく。
鶏肉の旨みと油揚げの甘みが加わって、出汁がまろやかになっている。
うどんをすすり、長ねぎの香りとともに味わう。
卵の黄身がとろりと溶けて、さらにまろやかな味わいに変わっていく。
ほうれん草の緑が目にもやさしい。
外で食べる鍋焼きうどんは、家で食べるのとはまた違ったおいしさがある。
湯気が風に流れていくさまを見るのも楽しい。
周りは静かで、人の声もほとんど聞こえない。
鳥の声と風の音だけが、ほんのりと響いている。
ひと口ずつ、ゆっくりと味わいながら食べ進めた。
汁まできれいに飲み干して、食べ終えると、体がぽかぽかと温まっていた。
片づけをしながら、また来たいなと思った。
季節が変われば、入れる具材も変わるだろう。
そのときはまた違う鍋焼きうどんを作ってみよう。
荷物をまとめ、原付に積み込む。
帰り道もゆっくりと走る。
昼の光が少し柔らかくなっていた。
静かな場所で食べた鍋焼きうどんの余韻が、まだ体に残っている。
今日はそんな昼だった。
道具を整えて持って行き、外で作って食べる。
そんな時間があると、暮らしのなかにちょっとした豊かさが生まれる。
またこういう日を作ろう。
▼しずかな時間に馴染むもの▼
シングルバーナーとクッカーがあると、外での食事がぐっと気軽になります。
静かな場所で湯気の立つ鍋焼きうどんを作るのは、そんな道具ならではの楽しみですね。

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