火のそばで、心を整える
少し心がざわつく日だった。理由は明確ではない。誰かとぶつかったわけでもなく、特別な出来事があったわけでもない。ただ、なんとなく落ち着かない。 こういう日は、無理に何かを片づけようとせず、気持ちが流れるほうへ身を委ねること…
少し心がざわつく日だった。理由は明確ではない。誰かとぶつかったわけでもなく、特別な出来事があったわけでもない。ただ、なんとなく落ち着かない。 こういう日は、無理に何かを片づけようとせず、気持ちが流れるほうへ身を委ねること…
鉄器のやかんを使うようになったのは、少し前にふらりと立ち寄った雑貨屋で見つけたのがきっかけだった。棚のいちばん奥、少し埃をかぶったような佇まいで置かれていたそのやかんは、重たくて、少し無骨で。でも、なぜか心惹かれてしまっ…
風が通るたび、窓辺の風鈴が小さく鳴る。その音は決して強くはない。けれど、耳を澄ませば、確かに空間に響いているのがわかる。 まだ朝の早い時間。窓を少しだけ開けて、ゆっくりと空気を入れ替える。部屋の奥にまで風が届くように、静…
昨夜のうちに、少し多めにごはんを炊いた。しっかり食べたはずだったのに、思った以上に余ってしまって、冷凍する前に、棚に置いてあった陶器のおひつを手に取った。台所の隅に、ずっとそこにあったもの。自然と使うようになったのは、こ…
週末の朝、いつもより少しゆっくりと目が覚めた。天気は曇りがちだけれど、湿気は少なくて、窓を開けると涼しい風が静かに入ってきた。今日は予定もない。だからこそ、何かひとつ、自分のためにごはんをつくってみようと思った。 ただの…
梅雨の晴れ間。薄い雲の向こうからぼんやりと光がさして、部屋の奥まで、白っぽい明るさが静かに広がっていた。洗濯物を干すには湿度が高そうだったけれど、だからといって何か急かされることもなく、ゆっくりと朝が動き出している。 こ…
少しだけ早く目が覚めた朝だった。 空気はまだ冷たくて、カーテンの隙間から射す光も、白くて淡い。まだ誰も動き出していないような気がして、足音さえも静かにしながら台所に立つ。 今日の朝ごはんは、目玉焼きとソーセージにしようと…
なんとなく、落ち着かない夜だった。 外は静かで、部屋も整っていて、体も疲れていないのに、どこか気持ちがざわついている。特別なことがあったわけでもなく、ただ一日が終わって、時間だけが余っているような夜。 こんなときは、ご飯…
夕方、思っていたよりも早く疲れてしまった。 人の多い場所に長くいたせいか、身体よりも気持ちのほうが消耗している。なんでもない会話に気を張り、流れるような人の波に逆らわず歩き続けて、帰るころには、どこにも出かけたくない気分…
午前十時前、曇り空。雲は多いけれど、雨が降る気配はない。風は穏やかで、空気に少しだけ湿気が混じっている。こういう日は、少しだけ走るのにちょうどいい。 朝に炊いたごはんを少し冷まして、おにぎりを握った。ひとつは梅干し、もう…